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Kunihiko Katsumata | cites on the move

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Kunihiko Katsumata
“cites on the move”
Solo exhibition | Photography

Kyoto | July 14 –29 , 2017
Open days : July 14, 15, 28, 29 and by appointment

>>Solo exhibition
July 24-August 10, 2017
“Skyline”
Venue : un petit GARAGE , Tokyo

–

『cities on the move』
伊藤俊治(美術史家、東京藝術大学教授)

エンジンを止め、風まかせで飛行機を航行することをソアリングと呼ぶ。機体の運動を風に委ねると、パイロットは周囲の大気の微細な様相や変化に異常に敏感になるという。パイロットの眼がまず知覚するのは大気中に溢れる多彩な光の存在だ。組み紐のように編み込まれたジェット気流、山にぶつかり吹き上がる気流、舞い踊るかのような暖かな上昇気流……それぞれの大気は独特の光の質感や色彩を持つことが明らかになる。固定されて動かない眼では把握できない刻々と変容する空気の繊細な表情だ。ダイナミックに動いている全体の一部として眼が光の構造へ入り込み、そこに潜在する無数の流れのパターンやテクスチュアを次々と感知してゆく。  世界はエネルギーの塊であり、多種多様なエネルギーに満ちている。我々はそうしたエネルギーの流れから、意味となるものを一度分解しようとする。色彩なら三原色に分解し、形態なら線や面に分解する。しかしエネルギーに満ちた世界を見るということは常に印象がぼやけたり、消え去ったりといった不確実性を伴う。私たちは安定した揺るぎない固視に軸を置きがちだが、そのような曖昧さを捉える新しい方法が見つかれば何か別のことを伝えることができるかもしれない。 「私は考える(私は考えるという存在である)」(デカルト)を批判しカントが示した「自我」の概念を、ドゥルーズは「時間の線により深くひび割れた自我」と表現した。「私は考える」は「私が存在する」ことを能動的に規定してゆく働きを表すが、この言葉はそれ以外の変容し続ける「私が存在する」ことの無定形で、不安定な広がりや深みについて言及してはいない。それゆえドゥルーズは「私は考える」の私と、絶えず変化してゆく「自我」の分離に現れてくる時間の特異な相を凝視しようとした。しかし彼はカントのように、この分離を統合し、再び「私は考える」へ規定しようとはせず、その分離というひび割れにひしめく混沌や逸脱や連鎖や飛躍を見続けようとしたのだ。  晩年にドゥルーズは映画にこだわったが、これは映画の光学、つまり「映画という知覚」に現れてくる新しい主体に気づいたからである。この時間とは、運動に従属した時間でも円環的な時間でもなく、出来事でも対象でも実在でもない、時間そのもののことだ。その「時間という知覚」のなかで新しい主体化が起こる。  統合化しえない、多種多様な性質を帯びた流れが絶え間なくその主体を通り過ぎてゆく。通り過ぎてゆくことで主体が生成する。その時、新しい主体が反重力のように環境に作用し、世界の流れに微かな偏流を生じさせる。 フラッシュ・ストロボの発明者ハロルド・エジャトンの瞬間写真に「シュリーレン写真」と名付けられた、空を貫通して飛ぶ弾丸の写真があるが、その弾丸の周りには光の屈折などにより美しい縞模様が写し止められている。シュリーレンとは「縞々」という意味だ。 勝又公仁彦の『cities on the move』の写真と映像では、撮影者自らが弾丸となって地面を滑走し、都市の動きに乗り、無限に生成し、揺動するパターンを切り裂いてゆく。そこには「縞々により深くひび割れた自我」が時の流れとともに鮮やかに残響しているかのようだ。

*Kunihiko Katsumata 勝又公仁彦 CITIES ON THE MOVE 2012 VER.1・カタログ, Text:Toshiharu Ito 伊藤俊治 (美術史家) Media passage 2012年

DM front image
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(C) Kunihiko Katsumata 《 cities on the move 》2016, chromogenic print,  Ed S:10 (50×33cm), L:6 (120×80cm)
(C) Kunihiko Katsumata 《 cities on the move 》2016, chromogenic print,  Ed S:10 (50×33cm), L:6 (120×80cm)